Whistlingとは

口笛を英語に訳すと、whistling(ウィスリング、ホイッスリング)になります。しかし、whistlingを日本語に訳しても口笛とはなりません。 どういうことでしょうか。そもそもwhistlingとは、whistle(ウィッスル、ホイッスル)という単語から派生した名詞です。 名詞としてのwhistleは楽器としての構造の単純な笛(体育用のホイッスル、アイルランドの縦笛など)、あるいは空気で鳴る「ピー」というたぐいの音を意味します。 一方、動詞としてのto whistleは楽器を使わずに笛の音を出すことを意味します。楽器としての笛を吹くときはto blow a whistleというので、whistleではありません。 なんだか非常にややこしい話ですが、とどのつまりwhistlingとは「楽器を使わずに、息を使って笛のような音を出す行為」を指します。さらにいうと、メロディーを吹くときはwhistlingですが、合図としての口笛はwhistleと称されます。 これには、口笛以外に指笛、歯笛、手笛などが含まれます。楽器なのかどうか微妙なラインですが、草笛や紙笛も多分whistlingに含まれるでしょう。 逆に英語で「口笛」に限定するためには、口をすぼめるという意味のpucker(パッカー)を付けて、puckered whistlingと言います。指笛はfinger whistling、また指笛や舌笛のように合図といて使われる大きい音のでる吹き方は総称してwolf whisltingと言います。 ですが、実際はここまで細かい分類をすると言語や地域によって文化的な差異が出てくる上、普通の人はそんなに細かいことを気にしないので、whistlingで演奏活動を行う人は一般にwhislter(ウィスラー、ホイッスラー)を自称します。

口笛音楽

口笛、あるいはwhistlingは古くから楽器として用いられてきました。 声と似て、自分の筋肉で直接音程をコントロールするため、一度習得すれば自在に音程を操ることができるというのが利点である一方、音量が小さい、音域が高い(ピッコロとほぼ同じ)などの理由で、口笛をメインに使う音楽はなかなか発展してきませんでした。 20世紀初頭から、レコードなどの録音技術の発展により音の通りやすい口笛が一般の音楽として普及するようになり、また劇場などでのショーの演目、パフォーマンスとしての口笛の立場が確立され始めました。 現在は音楽としての口笛へのアプローチがより重視され、多くのミュージシャンが曲のイントロや間奏に口笛を用いるほか、プロの口笛奏者も少数ながら存在します。

音楽以外のwhistling

口笛はメロディーを奏でる以外にも合図や呼びかけとして使われたり、また言語として使われたりすることもあります。この場合、遠くまではっきり伝わることが目的なので、口笛よりも指笛や舌笛など音量が大きいwhistlingが用いられます。 スポーツやコンサートの歓声に混じって使われるのはもちろん、他にも、ラテンアメリカの多くの国では女性の注意を引くために口笛を吹いたり、罵り言葉の代わりに用いたりします。 Whistlingを言語として用いる例は、スペインのカナリア諸島、フランスのピレネー山脈、トルコ、メキシコの先住民族などにみられます。カナリア諸島のゴメラ島では、音の高さで母音を、音の始まりと終わりのピッチベンドで子音をあらわし、指笛を使って入り組んだ山の中でのコミュニケーション手段として用います。 一方、メキシコの先住民族の場合は近距離で仲間同士の秘密の会話をするのに口笛を用いていたようです。もともと現地の言葉が中国語のような声調のある言語だったため、子音や母音を除いた声調だけを口笛で表現する方式を取っているようです。

著名なWhistler

海外:
-Geert Chatrou
オランダの口笛奏者。2004年にIWC(国際口笛大会)で初参加にして総合優勝して以来、三度同じタイトルを獲得し、現在活動する口笛専門のミュージシャンとしてはトップクラスである。クラシックをはじめとし、自身のオリジナル曲も多く演奏する。
-Ron McCroby
アメリカのジャズ口笛奏者。50歳近くになってから広告代理店の仕事を辞めて口笛奏者に転向し、レコードを3タイトル(内クラシック1)、CDを1タイトル録音している。「速吹き」に関しては彼の右に出る者は多分いない。
-Sean Lomax
アメリカの口笛奏者・ピエロ。元シルクドソレイユ「コルテオ」の専属口笛吹き/ピエロであり、彼のために作られた演目は一時期Robert Stemmonsという別の口笛奏者によって引き継がれていたが、2013年に復帰した。IWCで2000年と2012年に2度総合優勝している。
-Andrew Bird
アメリカのシンガーソングライター。自らの吹く口笛を音楽に多く取り入れている。映画"Muppets"で世界を救う口笛奏者のパペットの吹き替えをした。
-Roger Whittaker
ケニア出身のイギリス人歌手。英語とドイツ語で歌い、世界中で大ヒットした。間奏やイントロに口笛を使うだけでなく、"Mexican Whistler"のような口笛メインの曲も多数ヒットさせている。
-Toots Thielemans
アメリカのジャズハーモニカ奏者・ギター奏者。ビバップ期からギター奏者として活躍したが、ハーモニカ奏者としての方が有名。代表曲"Bluesette"は口笛とギターのユニゾンで演奏し、ジャズのスタンダード曲として今日でもよく演奏される。
-Ronny Ronald(指笛)
イギリスの指笛奏者。音楽としてのwhistlingの発展に大いに貢献した。多くの録音を残し、映画にも出演している。

日本:
- 分山貴美子
IWC2007成人女性部門総合優勝。自身のオリジナルアルバムをメジャーレーベルから複数リリースする他、サザンの関口宏之のアルバムなどにも参加している。日本で口笛と言えばまずこの人。
- もくまさあき
日本人として初めてIWCに参加し、3位に入賞。日本口笛音楽協会を立ち上げ、日本オープンくちぶえ音楽コンクールの開催など、日本の口笛音楽の発展に大いに寄与している。また、講師としてブラジルまで出張するなど世界的に活躍している。
- 柴田晶子
IWC2010、2012成人女性部門総合優勝。のびやかな音色でクラシックからジャズ、ピアソラまで幅広いレパートリーを演奏する。
- 口笛太郎
ウォーブリングを駆使したテクニカルな演奏と太くはっきりとした音色が特徴。ポピュラー音楽、ジブリ、ビートルズなどのカバーアルバムを録音している。
- くちぶえ村の村長
ニコニコ動画を中心としたインターネット上での活動が主であったが、2009年にIWC出場、2010年には日本オープンくちぶえ音楽コンクールで優勝し、現在はテレビ出演・ライブ活動などオフラインでも活動している。
- りょうすけ
クラシック音楽を主に演奏している。2012年にリリースしたバロック音楽のアルバムは前述のGeert Chatrouに「初めてのクラシック口笛音楽のアルバム」と評された。
- 田村大三(指笛)
日本の指笛音楽の創始者。人差し指を一本だけ用い、両手でラッパを作って吹く演奏スタイルを確立した。
- 森光弘(手笛)
プロの手笛(ハンドフルート)奏者。従来の形と違う「お祈り型」スタイルを開発、3オクターブの音域を演奏する。ピアノとのデュオCHILDHOODとして活動している。